The Masks of Time / Robert Silverberg



3冊目。
Robert Silverbergの『夜の翼』を探していたのだが、The Masks of Timeを見つけたのでこちらにした。『時の仮面』で邦訳も早川から出ていたが絶版中。
筋はだいたいこんな感じだ。物理学の見地から「時間の逆行」に取り組んでいる大学教授である中年男、Leoの一人称の視点で物語は進む。1999年クリスマスの日に、Vornan-19と名乗る男が一糸まとわぬ姿でローマのスペイン階段に空中から現れる。彼は2999年という未来から時を超え、ツーリストとして見聞に来たという。己のことは多くは語らない謎多き男、Vornanを監視するためにLeoは、政府によってに召喚された各専門の6人の学者らととも奇妙な旅を始める。
Vornanが未来人である決定的なエビデンスはない。またVornanは、その自由で無垢な存在に加え、ミステリアスな性的魅力にたけ、多くの女性が幻惑され、魅了されていく。天才が故にアリゾナの荒野で自由人として隠遁し、Leoの心の拠り所となっていた親しい大学の教え子だったJackとその魅惑的な妻Shirlyも、次第に報道されるVornanの魅力の虜となっていく。そしてVornanが徐々に宗教的なアイコン、メシアとして崇められ、世紀末の地球全土で狂騒が巻き起こっていく。あきらかに変調をきたしていくJackとShirly、そして学者たち。はたしてVornanが本当に未来から来たのか、フェイクなのか。彼はいつ自分の時に戻るのか。多くの謎を残しつつ、物語はカタストロフィへと向かっていく。
結論からいうと、とても面白く読めた。
1968年書かれた本作は、近未来SFというサブジャンルの中でも未来予測、あるいはタイムトラベルのようなプロットには全然重きを置いていないので、これをつまらない、と感じるSF読みも多いだろう。The Who のTommyとか、初期のDavide Bowie、Lou Reedあたりの世界観に見られるような、終末観と都会的なデカダンスがブレンドされ、ミドルエイジクライシス気味の冷静な主人公が、カリスマを帯びたトリックスターの不確定な行動によって、次第にファナティックな性的ヒステリアに翻弄されていく物語は、ある種の近未来のフォークロアともいえる。表紙絵もその雰囲気を増幅している感じだ。たとえば中期の大江健三郎などが好きなら抵抗なく読めるはずだと思う。
Robert Silverbergのほかの作品もぜひ読んでみたい、そう感じる一冊だった。

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