Planet of The Damned / Harry Harrison




8冊目。
Harry Harrisonは”Death world”(『死の世界』シリーズ)をかつて読んだはずだ。たまにはアドベンチャーアクションなSFを読むのもいいだろうと思って手にしてみたのがこのPlanet of The Damned(『殺意の惑星』)。何度か早川書房の方から翻訳がでていたようだ。裏表紙に”72 HOURS IN HELL”。なるほど時間制限ありか。ということで、スリリングな展開を期待しつつ読み始めた。

アウトラインはこんな感じだ。まず例によって光速を越える星間航法を確立した人類は、地球から銀河の星々へ拡散しEarth Empireが築かれる。時の経過とともに入植した人類は環境に適応、あるいは淘汰され現在に至る。惑星Anvharもその一つ。一年780日のうち700日が冬という特異な環境の惑星にわずか700万人が生きるAnvharでは、Twenties(10種+10種競技みたいなこと)という競技が確立される。何もない惑星の唯一の娯楽兼ガス抜きのようなもののようだ。フェンシングなど肉体的なものからチェスなど知的な能力が問われるものまで種目の幅は広い。当然優勝者は大いなる栄誉を授かる。冒頭は主人公Brion BranddがこのTwenties優勝を勝ち取る所から始まる。

優勝と引き替えに満身創痍となったBrionのもとへ、かつての優勝者(ただし見る影もなく太ってしまった)Ihjelが、ある使命をBrionに促す。それは主星をEpsilon Eridaniとする第3惑星Disと第4惑星Nyjord、隣り合った2惑星の破滅を阻止するというものだ。結構な難題だがそこはTwenties優勝者同士、「競技より大切なものが、外の世界にあるんだぜ」と迫られ、Brionは引き受けてしまう。一本気な漢なのだ。
惑星Disはもともとは乏しい鉱物資源を採掘するため人類が入植したものの、星間通商のルートの関心から外れていた上、その後Earth Empireの「決裂(詳しくは書かれていない)」の影響で孤立してしまい、忘れられた星の文明は石器にまで後退してしまう。仮借ない灼熱と、水は焼けた岩砂と地下深くという劣悪環境下で、Dis人は歯がむき出し、憎しみに満ちた獣のよう体へ変化していった。その中でMagterと呼ばれる謎の支配層が、どういうわけかコバルト爆弾を入手し転移装置でNyjordに打ち込む準備をしているのである。惑星NyjordはDisとは真反対に文明的であり、計画を察知。売られたけんかは先制攻撃で、とDisに水爆を打ち込む準備を始める。このカタストロフィを回避するのがBrionに与えられた役目だ。

ここでもう一人の主人公、Ihjelがスカウトした選り抜きの女性宇宙生物学者、Dr. Lea Moreesも加わる。さて、ムキムキの美男とキレキレの美女がそろってしまった。
一団が惑星Disに降りたって早々Ihjelは頓死。残された美男・美女は命からがら、CRF(Central Relationship Foundation)というIhjelが席を置いていた地下組織に救われる。惑星Disが準備しているコバルト爆弾はどこに? Brionは、鍵は謎の支配層Magterにあり、と狙いをつけ巣窟に突入。そこでMagterのまるでロボットのように意識のない無機的な本質に気づく。Dis人Ulvや、CRFのエージェントTelt、Nyjord Armyなどキャラクターがもつれながら、カタストロフィ打開へ突き進む。
NyjordがDisに水爆を打ち込むタイムリミットまであと3日。回避できるのか?やれるのか? とまあ、こんな感じだ。

プロットの軸は、優性が劣性に寄生するというような、惑星Dis独特の環境下での生物の適応能力と共生関係の解明にある。BrionのTwenties winnnerとしてのタフな肉体と鋭い洞察、Dr. Leaの生物学的知識がものを言い、やがて物語はMagterの行動原理の謎へフォーカスしていく。とはいうものの、謎はまあ途中からうすうす予見できるので、それよりどうしても美男・美女の関係性に目がいってしまう。
Dr. Leaは知的でオープンな性格ながら、古き地球出身のため体も小さく、植民星の人間に対してなんとなく劣等感を抱いている感じだ。初対面のBrionにつんけんしているのもその反動のようだ。一方無骨の漢Brionも、なんとも不器用にDr. Leaと接していく。研究に根を詰めている彼女をおもんばかるBrionに彼女は”Is the boss-man looking after the serfs, to see if they're fit for the treadmills in the morning? ”(奴隷がうまく苦役にハマってるかどうか、ご主人様が朝から気にしてるかしら?(大したことないわ、くらいの意か))という地球流のしゃれた比喩を投げかける。対して俺ってちっちゃな星のただの田舎もんかも、と内心スネてしまうBrion。Twenties winnnerのプライドもどこかへ行ってしまう。どうなるのかなこの二人。

そんなわけで、物語のテンポもよくなかなか楽しめた(出版当時の米国の社会背景とか考えちゃうとつまんないのでそこは無視)。が、美男・美女を掘り下げたらもっと面白くなりそうだったけどなあ。と思ったら、あるじゃないの続きが。
なるほど"Planet of No Return"ね。




って、帰れないんかい! 



 

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