Brightness Falls from the Air(1) / James Tiptree Jr.





9冊目。
James Tiptree Jr.の”Brightness Falls from the Air”(『輝くもの天より墜ち 』)を読了。微かなため息を零す思いで本を閉じた。
主に短編の巧者で、質の高い作品が多いにもかかわらず長編は数えるほどしかないこの作家は、早川から何冊も翻訳が出ているが残念ながら本書は絶版のようだ。
中学生だった昔、SF師匠のようなある同級生がいた。こちらが1冊読んでいる間に、軽く10冊は読んでしまうような羨ましい能力の持ち主で、読書量は半端ではなく、いつも教えられることばかりだった。Larry NivenやJames P Hogan、Roger Zelazny、はたまたAnne McCaffreyやTolkienまで、ネットもスマホも無い時代、彼独自のアンテナでキャッチした本を、感心しながら後追いで読んでいったものだった。そんな彼がある時、James Tiptree Jr.という聞きなれない作家を、まるで埋蔵金でも見つけたように嬉しげに語っていたことを覚えている。今も昔も変わらず積ん読ばかりで結局読まずじまいであったが、思い出とともに今に至るまで不思議と記臆に残る名前だった。

James Tiptree Jr.といえば、第二次大戦中はUSA Air Forces入隊、戦後はCIAの局員となり、辞職後は大学で博士号を取得という来歴と、「James」や「Jr.」という名前の印象からタフな男性作家と認識していたが、実は女性作家であったことをつい最近知ったというお粗末。ずいぶん以前から知られていた事実のようであるが、この「男性」という覆面から作家の本質がうっすら見え隠れする気がしてならない。そのことについてはまた後述したい。

本書は諸作品の中でも数少ない長編の一冊である。380ページあまりというボリュームに多少物怖じしたものの1985年出版ということで新しめなので比較的読みやすそうであったこと、何より美しい表紙絵に惹かれて手にっ取ってみた。写真ではおわかりいただけないのは残念だが、一部立体的にエンボス処理されたオーロラのような景色とRobert Silverbergの『Nightwings』を思わせる飛翔する蝶人間のような幻想的なイラストが印象的だ。しかも巻頭には、いかにもSFらしい天体図と、SFらしからぬミステリー小説のような建物の平面図と不思議な名前の作中人物が連なるページが挿入され、読む前から期待が高まる装丁だ。しかも物語はその期待のさらに斜め上を行くものであったのだ。

少し物語を紹介してみたいと思うのだが、ある種のスリラー的プロットが軸となっているのであまり語りすぎるのは野暮というものだろう。しかし少なくとも物語のアウトラインは押さえてみようと思う。
冒頭に「物語はGalacticという実際の共通言語を、1985年頃の古風な地球のことばに翻訳して云々・・」とある。舞台は人類が築いたFederation(連邦政府)と、多様な星々のalienが共存する未来の星間世界の中、Damiemと呼ばれる、とあるひっそりとした観光主体の惑星である。物語はadministrator(管理者)たちが、visitorsを迎える場面から静かに始まる。

(つづく)

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