Pebble in the Sky / Isaac Asimov





教科書に載るような優等生SF



12冊目。
Isaac Asimovの“Pebble in the Sky”(『宇宙の小石』)を読了。創元SF文庫とハヤカワ文庫SFの両方で翻訳されていたようだ。
たまにはクラシックもいいだろう、ということで、懐かしのAsimovを。本書は著者初のSF長編(1950初出)であり、のちのち代表作となっていく『銀河帝国興亡史(ファウンデーション・シリーズ)』の壮大な未来史へとつながっていく前段となる独立した作品群「Galactic Empire(銀河帝国)シリーズ」のひとつである。

物語の発端は、シカゴでテーラーをリタイヤしていたのんきな62歳の現代人Joseph Schwartzが、とある核実験で生じた“time faults(時の断層)”によって、GE(Galactic Empire)827年、人類が巨大な銀河帝国を築いている数万年後のEarth(未来の地球)に身ひとつで「不本意に」タイムスリップをしてしまうところから物語は始まる。

Earth(未来の地球)は・・・

(1)長い年月によって「人類発祥の星」ということは忘れ去られている。
(2)使用言語は現代の英語とは全く変わってしまっている。
(3)放射能につつまれ、“Chica”など隔絶されたいくつかの都市でしか住むことできない。
(4)人口を2,000万人に抑制するのため、“The Sixty”よばれる、
  自ら60歳で生涯を終えなければならない慣習があり、Earthman(未来の地球人)である
  “High Minister”(最高位の聖職者)が“The Sixty”の裁定者である。
(5)Earthmanは、High Ministerのもと、“The Society of Ancient(古代共同体)”
  と呼ばれる組織によって厳しい監視下にある。
(6)Earth(未来の地球)は「Imperial Government(帝国政府)」に併合されており、
  「Procurator of Earth(辺境行政官)」が「Imperial」から派遣されている。
(7)Galactic Citizen(銀河市民)にとっては、辺境にあるThe Galaxyの
  属州のひとつとしてしか認識されていない。
(8)人類が全て「単一の星(人種)の子孫」という考えは「同化思想」として
  The Galaxyから危険視されている。
(9)EarthmanはThe Galaxyから強い差別意識を持たれている。

といった感じで、あまり歓迎のできるような世界ではなかった。Schwartzはある種の認知症として扱われ、あれよあれよと脳神経学者Dr.Shektによる未完成の知能増大装置“Synapsfier”の実験台にされてしまう。実験によってSchwartzは覚醒し、カメラのような記憶力によってEarth語を話せるようになり、“Mind Touch”と呼ばれるテレキネシスとサイコキネシスが備わってしまう。IDもなく、年齢も62歳と、“The Sixty”の慣習も破っているSchwartzは“The Society of Ancient(古代共同体)”にマークされてしまう。

一方、シリウス出身のGalactic Citizen(銀河市民)、考古学者でイケメンのBel ArvardanがEarthにやってくる。彼は独自の調査発掘で、Earth(太古の地球)こそ「人類発祥の星」だという説をとなえ、その確証を得るために、高放射能に覆われた「禁じられた区域」の発掘調査をProcurator に嘆願しにきたのだ。やがて、Dr.Shektの娘で有能な美人助手Polaと偶然出会い、恋に落ちる。彼は優性意識の強いシリウス出身にもかかわらず、インテリゆえEarthmanに偏見を持っていなかったのだ。

Arvardanは、The Galaxyからは「同化思想」を唱える危険人物として、逆にEarthからはThe Galaxyのよからぬ活動家と疑われ“The Society of Ancient”に追われ始める。High Ministerに実務を任された司祭Balkisは、Arvardan、Dr.ShektとPola、そしてSchwartzを同じ扇動グループと見なし確保する。司祭Balkisは彼らを利用しつつ、The Galaxyに反旗を翻し、さらには自らが独裁的な実権を握ろうと密かに悪事を画策していたのだった。

と、こんな感じで、展開はいとクラシック。最後にしっかり落としているところはAsimovらしいサービス精神が感じられる。また「老いと社会」、あるいは「レイシズム」といった、普遍的な課題をやんわりとプロットに盛り込んでいるあたりは、なかなかの優等生的で「教科書に載るSF」とでも言いたくなる。さすがにハラハラどきどき、とまではいかないが、安心して読めるSFも悪くない。

最後にGRAFTON版のこの表紙絵について。タイトルの“Pebble in the Sky”はおそらく、Dr.Shektの溜息まじりの言葉(P42)“To the rest of the Galaxy, if they are aware of us at all, Earth is but a pebble in the sky.” (「のこりの銀河(銀河帝国)にとっては、どうせわれわれに気づいたととしても、地球なんてせいぜい空の小石ってなもんだ」)というように、比喩的な意味だと思うのだが、この絵だと本当に宇宙の小石に乗っかった都市・・・中身読んでない人が発注したに違いない。創元社版のロケットがシルエットの赤い表紙絵は、昔はダサくも感じたが、今は一周してレトロな味わいがある。


  

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply