Time and Again / Clifford D. Simak





それがデスティニー  THE ONE will be with you



13冊目。
Clifford D. Simakの”Time and Again”(ハヤカワ・SF・シリーズ『再生の時』、久保書店『アンドロイドの叛乱』)を読了。シマックは『中継ステーション』が新訳で読めるようだが本書は今のところ絶版か。前回のアシモフに引き続き、50年代のSF(1951初出)を読んでみた。

80世紀の未来。それは人類と、人類に奉仕するために化学的に創造されたアンドロイドたち、そしてロボットが共存する世界だった。アンドロイドと人類の違いは自己複製(生殖能力)できないという点と、額にタトゥされたシリアルナンバーのみであった。もはや戦争は無く、かわりにガンによる”challenge”(決闘)が認められていた。Galactic Empireを監視する任にあたっていたChristopher Adamsのもとに見知らぬ男がやってくる。彼は未来から来たAdamsの後任者だという。80世紀ではわずか数秒の未来に渡れるにすぎない技術が、その先の未来ではタイムトラベルが可能なまでに発達していたのだ。にわかに信じられない男の言葉だったが、さらに驚きの命令する。”Sutton must be killed.”(Suttonは消されなければならない)。Adamsの部下で、この物語の主人公Asher Suttonのことだ。

”61Cygni”(白鳥座61番星)への単独の危険なミッションで行方不明となった探査官Asher Suttonは20年ぶりに地球に帰還し、時の人となっていた。ところが彼の帰還にはある疑惑が持ち上がっていた。彼の帰還の様子は以下のようだった・・・
・no spacesuit(宇宙服を着用せず)
・hull was riddled(船体は穴だらけ)
・no food, no water(水も食料もなく)
・61is eleven light-years away(61番星は11光年離れている)
したがってSuttonは死んでいたはずなのである。
さらに、AldebaranXIIでの事件が追い打ちをかける。宇宙船の事故で3人の人間と2人のアンドロイドが黒焦げとなって死んだ。その現場から、ある「本」の残骸が見つかる。わずかに読める黒焦げのタイトルにこう記してあった。”by Asher Sutton”。20年間行方不明であったSuttonが本を出版したはずがない。だとすると・・・
彼は人類の脅威となる、人間ではない何かではないか? 恐るべき疑惑から、AdamsはSuttonを消しにかかるのだった。

一方、ひとり老舗のホテルで静養していたSuttonも、身の回りの対応に妙な違和感を感じていた。そこでいきなり”challenge”(決闘)を申し込まれ、勝利することでアンドロイドのHerkimerと謎の美女Eva Armorと知り合う。この顛末を通して、アンドロイドの権利を人類と同等とすべきという活動を知る。人類全体から見ると彼らは一段低いものであってそれ以上のものではない。Sutton自身はアンドロイドにもロボットにも偏見を持ってはいなかったが、社会はその身分に強い線を引いていたのだ。
HerkimerとEvaは彼に”This is Destiny”という本を書くように促す。その本が将来人類、そしてアンドロイドたちの最終的なすばらしい「Destiny(運命)」を握るというのだ。そうこうするうち、本を書き上げられては困る立場からの妨害が入る。さらには本の内容を都合の良いように改変したい”Revisionist”(修正派)からも命を狙われるようになる。

Suttonは幼少親代わりに育ててくれた家族同様の家政ロボット、Basterから手紙を受け取る。BasterはSutton家に仕えるのを引退してアステロイドベルトに隠居するというのだ。(ロボットが隠居というのもおもしろい)そこで代々伝わるトランクいっぱい骨董がSuttonに送られてくる。そしてその中から未開封の非常に古い手紙を見つける。それは1980年代のSutton家の祖先、John H. Suttonが未来の子孫に宛てた手紙であった。彼は複数の追っ手を逃れ、6000年前のWisconsin州にタイムトラベルをする。さて、ここから時空を越えた戦いが始まりそうなものだが、Suttonは結局10年、1970年代のWisconsinの田園で農作業に明け暮れることになる。この辺が実にシマックらしく非常にのんびりしている。

Suttonにとって「Destiny(運命)」とは何を意味するのか? 果たしてSuttonは本を書き上げることができるのか? アンドロイドと人類の対立の行く末は?  HerkimerとEvaの真意は? 各抵抗勢力は彼を捕らえるのか? 数々の謎の結末は如何に・・・

物語は(主人公も読者も)置かれた現状をよく認識できないまま、(主人公も読者も)結局それが何だったのかよくわからず置き捨てていく。という感じで進んでいく。SF的ガジェットがふんだんに盛り込まれているにも関わらず、主題は「Destiny(運命)」に捕らわれた男の孤独であり、タイムトラベルのプロットは「未来から過去への干渉で、未来は改変できない」という立場を取っており、「じゃあそもそもどうなんだよ」と読み手の理解がかなり混濁するするため、ある種形而上的な思考が問われる作品だろう。少し期待とは違った形だったが、これはこれで面白い一冊であった。ただ再読はないかな。

最後にカバーイラストに関して。methuen版はまあ悪くない。旧ハヤカワ・SF・シリーズはおなじみの抽象画だが孤独感はマッチしているかな。で、久保書店版。なかなか笑わせる。エイリアンと007ムーンレーカーでも混ぜたようないかにも80年代のSFバブルな雰囲気だなぁ〜。確かに場面場面を切り取っているけど、結果別物笑。自分なら、夕日に照らされた広大な牧草地に、ぽつんとオーバーオールの男がフォークに手を置いて、眼下を流れる河を見つめている後ろ姿、みたいなディレクションをするかな。




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