Nine Princes in Ambe / Roger Zelazny





一人称で語られるクールで珍味なファンタジー



19冊目。
Roger Zelaznyの”Nine Princes in Amber”(1970)を読了。ハヤカワ文庫SF収録(『真世界シリーズ1 アンバーの九王子』)も現在は残念ながら絶版のよう。全5巻のシリーズで、さらに続編が5巻あるのだがそちらは完全に未訳となっている。

『真世界』・・・いや懐かしい。中学生の頃、SF師匠の友人がファンタジーにも詳しく、当時トールキンや『ドラゴンの戦士』や『ゲド戦記』なんかを愛読していた。ちょうど『指輪物語』が映画化されたり(アニメの方ですよ)、国内では『グインサーガ』なんかも刊行されはじめた頃だったと思う。
その当時2大読まず嫌いなジャンルがあって、ひとつはロボットとか艦隊とかがドンパチする戦記物で、ひとつはこうしたオーソドックスなファンタジーだった。中学生のくせに、なんかchildishと感じてていたのだと思う。まあ背伸びしたいお年頃だし。
唯一はまったのがこの『真世界シリーズ』で、『わが名はコンラッド』や『伝道の書に捧げる薔薇』などで知ったRoger Zelaznyという不思議な名前のニュー・ウェーブ作家のファンタジーということで興味を持ったのだと思う。とはいえ、内容の記憶はほとんどないので新鮮な気持ちで読むことができた。この一人称で語られる、クールで一風変わった珍味と言えるファンタジーのアウトラインをご紹介しよう。



[導入]

●ふと目覚めると、「私」はGreenwood Private Hospitalの病室で、下半身をギブスと包帯でぐるぐる巻きで寝かされていることに気づく。なぜ大怪我をしているのか、病院にいるのか、それ以前に自分は誰なのか、一切の記憶を喪失していた。
●監視は「私」をひどく恐れていた。自分が何者かわからないものの、微かな記憶の断片をたより「私」が「私」である状況を最大限利用したブラッフ駆使しながら、病院から抜け出すことに成功する。なぜか歩けるほど急速に怪我が回復していた。
●その際自分自身についていくつかのヒントを得る。自分の大怪我は2週間前の事故によるものであること。それは兄弟(Eric)と関わりがあること。。また病院に入所させたニューヨークの妹(Florimel)の存在も知り、事態の打開のために直接会いに行くことにする。
●「私」の来訪に妹(Florimel)はひどく動揺するものの邸宅内に招き入れてくれた。彼女は「私」をどこか信用していない様子だった。彼女は「私」を”Corwin”と呼んだ。それが「私」の名前だった。「私」は記憶喪失を隠しながら、ある程度話を合わせつつ情報を引き出していった。
●一旦邸宅の図書室でくつろいでいると、なぜかダ・ビンチの解剖学の書物にピンとくるものがあった。また、飾られていたサーベルを手にすると、難なく扱えることに気づいた。なぜかわからないが「私」は自分自身のポテンシャルを認識していた。さらに物色していると、図書室の隠し引出しにしまわれていたユニコーンの描かれた一揃いのカードを見つける。タロットのようだが何かが違っていた。



[カードの肖像]

●特徴的なのは、描かれているいくつかの肖像で、それらを眺めながら、徐々にそれが王国" Amber"の王子たち、「私」(Corwin)の兄弟であることを思い出すことができた。以下が、描かれていた。
Corwinにつく/Ericにつく/消息不明)

Random
・意地悪そうな小男。ルネサンス風の衣装をまとう。
Julian
・長い黒髪に青い目。白い鎧をまとう。ゲームに負け、「私」にワイングラスを投げつけたことが思い出される。
Caine
・日に焼けた肌。黒い瞳。黒と緑のサテンの衣装で、しゃれて腰に手をあてている。
Eric
・青い髪のハンサム。腕力のある。「私」の宿敵。2度殺そうとした。
Benedict
・長身でやせ形。気むずかしそうで滅多に笑わない。消息不明。
Brand
・消息不明。
Corwin
「私」。本シリーズの主人公。黒髪。緑色の瞳。黒とシルバーの衣装。
Gérard
・パワフルな巨漢。首に大きなハンティングホーン。
Bleys
・髭に赤とオレンジのシルクの衣装。剣とワインを手に。最初にalliance(同盟)

9人は、Amberの王(Oberon)を父にもつ血を分けた兄弟であった。そして互いに父の不在による王位継承の争いを数世紀にもわたって繰り広げていたのだった。

また4人の妹たちの肖像もあった。
Florimel
・またはFlora。美しい。
Deirdre
・黒髪、黒い瞳、黒い衣装。パワーを失ってしまった。
Llewella
・Rebma(海中都市)に住む。
Fiona
・Eric’screature

また「聖杯」や「剣もあった。

Amber! その響きに「私」は強烈なノスタルジーを覚えた。しかしそれ以上は思い出せなかった。
Floraは語った。

 "The Road to Amber --- is difficult." 
 アンバーへの道のり --- それは険しいわ




[ShadowsからReal Worldへ]
●突然兄弟のRandomが乗り込んでくる。Shadowsに追われていた。彼は「私」が自分のことをよく思っていないこと気にしている様子だった。二人でFlorimelのメルセデスを拝借して邸宅を後にする。
●Randomの言動から「私」の立ち位置がぼんやり見えてくる。

 "I have been wondering." he replied,  
 "whether you were out for vengeance, pure and simple. or something more," 
 「不思議に思っているんだが」彼は答えた、
 「あんたが単に純粋な復讐に向かっているのか、あるいはほかに何か・・・」

●ひとまずRandomの言われるままにメルセデスを走らせた。彼はあたかも原理のようにつぶやいた。

 "All roads lead to Amber," 
 「すべての道はアンバーに通ず」

●Randomは、ある種の感覚的な足し算・引き算をしながらうまく移動していると語った。次第に辺りの風景がおかしく歪んできた。やがて日常の風景は完全に消え、深い森の中へと移行していった。アンバーへの中間地点"Forest of Arden(アルデンの森)"だ。そこで兄弟Julianの強襲に合う。Julianは他の兄弟たちGérard、Caineとともにアルデンの守護をEricに命じられていた。Julianは車の中が「私」とRandomであることにひどく驚く。Julianに打ち勝つも、殺しはしなかった「私」を見て、Randomはかつての「私」の残忍性が無くなったと唸った。
●アルデンを抜け、車のガスも尽きかけたころ、「私」の服装も黒とシルバーの正装に変化。Randomも。いつの間にか英語ではなく"Thari"という言葉で会話していた。" real world(真世界)" に到着したということだった。「私」は記憶を失っていることを告白する。



[Patternを通過とAmberの捕囚]

●妹のDeirdreと合流。彼女とともに" Rebma"へ向かう。" Rebma"は" Amber"から隔絶された海中の都市で、" Amber"の鏡像でもあった。(" Rebma"は" Amber"を逆さ読み)妹のLlewellaが出迎え、都市の王女" Lady Moire"に謁見を許される。王女は「私」の武勇伝は伝説だと賞賛した。そして、失った記憶を甦らせるためにも"Pattern" を通過するよう勧めた。通過することで記憶がよみがえるのだ。
●世界の中心は"Real World"であり、その王国がimmortal city(不滅の都市)"Amber"である。対して、現在の地球は"Shadow(影)"であり、常に"Real World"の反射の影響下にある"Amber"の平行世界だった。
●"Shadow"と"Amber"を行き来する方法は三つある。ひとつは、先に行ったように、"Shadow"を感覚的に足し算・引き算しながらうまく道を確保して通過する方法。二つ目は"Pattern" と呼ばれる" Rebma"にある迷路のような回廊を通過すること。ただし"Amber"の血族しか歩くことは許されない。そして三つ目は肖像のカード(mad artist " Dworkin Barimen"が父Oberonの指示で製作された)を使うことで、カードの肖像の人物と合意が得られると肖像が実像となり互いに行き来できる。

●Patternを通過しながら「私」は王位を争う兄弟Ericが、自分を"Shadow"に追放したことを思い出す。それは欧州でペストの流行した時代だった。以後さまざまな経験をし、地球の歴史に立ち会いながら"Shadow"で生きながらえる。それは「私」にとって大きな経験値となていた。それは残忍な性格から、愛を知る人物へ、人間性にも明らかな変化を生じさせた。
●Patternを通過し、「私」はいよいよ" Amber"に潜入する。
●「私」はカードを使ってBleysと連絡を取る。大軍を有するBleysと同盟を組み、Ericに挑むも難なく撃退され、Bleysは行方不明に、自分はEricの捕囚となる。Ericは戴冠し、真の王となる。「私」は両目をえぐられ、dungeonに幽閉される。「私」はチャンスがあるのか? それともこのままdungeonで朽ち果てるのか?


[読後]

●現代の地球は"Shadow"であり、舞台はヒロイック・ファンタジー特有の剣と魔法の『真世界』"Amber"だが、主人公Corwinの感性はクールな現代人である。この感覚がひねりが利いて痛快だ。本書は全巻5の第1巻なので、まだ世界観の全貌はおぼろげで、いまだ謎に包まれている王子たちの所在も気になるところ。今のところCorwinの驚異的な肉体回復力と怪力しか特長は見られないが、智恵もまわったりするとおもしろいかも。ひとまずは続きを読んでみようと思う気にさせる。
最後にカバーイラストについて。所有のAVON版はなかなかの雰囲気だがちょっといかにも普通。やはりCorwinの現代的な感覚も表現して欲しい。なので、ブラシのタッチがちょっと懐かしいハヤカワ版が一周して案外クールで悪くなく見える。




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