Sign of the Unicorn / Roger Zelazny






犯人捜しのサスペンスへギアチェンジ



21冊目。
Roger Zelaznyの”Sign of the Unicorn”(1975)を読了。ハヤカワ文庫SF版(『真世界シリーズ3 ユニコーンの徴』)は絶版。"Real World"(真世界)シリーズ第3弾である。


まずここまでのおさらい。

Amber
●唯一の”real world”(真世界)。対して。従属的に無数のパラレルワールド、”shadow”が存在する。
●Amberは、Oberon王が王座を退き、謎の失踪をとげていた。
●以後、空位の王座を巡り、Oberonの子どもたちが微妙な駆け引きを繰り広げていた。

Corwin(主人公)
●9人の王子の中で、次期王座にはEricが有力であった。Ericは父にも愛されていたCorwinを危険視し、”shadow”の一つ、”shadow Earth”(つまり現在の地球)にAmberの記憶を抹消し幽閉した。以後数世紀Corwinは記憶をなくしたまま過ごすことになる。
●時は巡り、”shadow Earth”20世紀、Corwinは謎の自動車事故に見舞われ瀕死の重傷となる。Amberの何者かが、幽閉では飽きたらず、彼の抹殺を試みたのだった。
●しかし、事故はむしろCorwinの記憶を呼び覚ました。”shadow Earth”での長い記憶喪失の時間と経験が(1巻では近代史のいろいろな場面に立ちあったCorwinの経験が記されている)によって、狡猾で残忍な本来の性格から、穏やかでヒューマンな性格に変化していた。第1巻の”Nine Princes in Amber”はこのあたりから始まる。

Tramp
●Trampは、Oberon王の依頼で、謎の宮廷画家にして狂った魔法使いDworkinの手によって作成された。Amberの血筋のものはみな、このカードセットを所有している。カードには王族の肖像が1枚ずつ個別に描かれ、様相はトランプというよりむしろタロットカードに近い。Trampには重要な機能がある。
●カードに描かれた相手と合意が得られれば、交信(電話のような機能)あるいは直接行き来(転送器としての機能)ができる。アクティブな時はカードに冷気が漂っている。

RebmaとPattern
●Amberの海岸の水中に、Amberの鏡像都市Rebmaが存在する。RebmaはPatternと呼ばれる迷路のような回廊に通じている。
●Patternは王家の血を引く者のみが通過を許される回廊で、通過には苦痛が伴うが、通りきるとさまざまな能力が強化される。また”shadow”へ”hellride”(行き来)することが可能。
●”shadow”へ”hellride”は(1)Patternを通過(2)Trumpを使用(3)本人の能力で道を操作する、の3通りの方法がある。つまり王家の血族のみが”hellride”可能なのだ。

Ericの死
●Corwinはさんざんな目に遭わせたEricに復讐を誓い、一旦”shadow”の一つAvalonに赴く。このあたりからが第2巻”The Guns of Avalon”となる。
●CorwinがEricに肉薄した時、どういうわけかすでに彼は致命傷を受け、瀕死の状態であった。死の淵でEricはCorwinに手にしていた”Jewel of Judgment”(審判の宝石)を譲る。王家に伝わる巨大なルビーの首飾りで、”weather changer”(気象を自在にコントロールする)としての力をもつ。



それでは本編のアウトラインを。



[Grove of Unicornの惨劇]

●Amberに落ち着いて数年後、いよいよ王座も眼前となった「私」(Corwin)はトラブルに見舞われる。Amberの静謐なGrove of Unicorn(ユニコーンの森)の近くに導き出された「私」は、そこで無残に刃物で喉元を切られた兄弟Cainの死体を見つける。おりしも犯人とおぼしき血染めの「獣」が立ち去ろうとしていた。「私」は「獣」を一蹴し、Cainを埋葬し、「獣」の遺体を持ち帰ったのだった。
●現場に遭遇したのは自分だけ。兄弟たちの疑心暗鬼を考慮すれば、自分がCain殺害の濡れ衣を着せられることは考えにかたくない。ひとまず「私」は兄弟Randamに知らせ意見を求めた。なぜならこの「獣」に見覚えがあったからだ。「私」がshadow EarthのGreenwood病院からFlora宅へ赴いた当初、Randamがこの「獣」に追われていた からだった。


[Randamの回想]

"While sex heads a great number of list, we all have other thing we like to do in between. With me, Corwin, it's drumming, being up in the air, and gambling - in no special order." 

SEXが無数のリストの筆頭にあるとはいえ、ほかのこともはさみこみたいわけさ。俺にとってはねCorwin、それは、ドラムを叩いたり、(グライダーで)空高く上がったり、ギャンブルしたりすることさ・・順不同でね。


●Randamは「私」と再会する以前までの物語を語った。彼はそれまで"Texorami"というshadowでのんびり過ごしていた。"Texorami"はパームツリーと海、ギャンブルバーといった歓楽地。ひねもす小型グライダーで空をサーフィンを愉しんだり、地下室でドラムでジャズセッションに興じたり、女をつくっていたりし、外部と接触することなく2年ほど過ごしていた。
●ある日のことTrampで兄弟Brandから連絡が入る。なぜか彼は見覚えのあるshadowの塔に鎖につながれ幽閉されていた。早速救出に向かうも、不気味な「獣」に阻まれ、かなわず一旦撤退を余儀なくするのだが、”hellride”で"shadow Earth"のNYに退却したにもかかわらず、「獣」たちも追って来たのであった。王族のみが可能な”hellride”を「獣」たちもこなしていたのだった。そんな状況下で「私」と再会したのであった。


[Randamの推論]

●「誰かわれわれよりも”hellride”に熟知し、われわれがTrampを使用したり、Patternを通過したり、あるいはAmberに隣接したshadowを通過する動きを察知できる能力を持った者がいるはず。あるいはDworkinのレッスンを受けているかもしれない」つまりRandamの推論から、われわれ王族の中に兄弟Brandを幽閉し、われわれを監視している犯人が居るようだ。
●「私」は、連絡のつく兄弟姉妹を全員呼び寄せ、一堂に会し、今一度Randamに、Brand救出の物語を語らせ、彼らの反応を見た。

この中の一人、あるいは複数人が犯人なのか・・
やがて「私」は月光で浮かび上がる幽玄な空中都市”Tir - na Nog!th”で、ありざる幻影を見る・・その意味とは


[読後]

●本編は「剣と魔法の世界」はやや影を潜め、現代的な犯人捜しのサスペンス的な方向にシフトしている。とはいうものの、ファンタジーとしてのガジェットは豊富なので、やはりこのシリーズの妙味が全開である。全5巻のシリーズの中間ということで、やや地味な印象もあるが、「で、どうなるの?」という興味はつきさせない。いままでなんとなくトランプのジャックのように味のないイメージだったRandamが、本編でなかなか粋な風流人だということが分かった。他の兄弟姉妹も徐々に性格が描きこまれ、そうした意味で、クライマックスに向けた助走、といった位置づけがよさそうだ。

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